中之条の家 改装工事

 築100年あまりの本体部分と築25年の増築部分の改装工事です。

 伝統的な和室の続きまで、建具を開け放つととても広い空間になる間取りにトイレなどの部分を増築した建物でした。一部に白アリの被害もあったため、被害の大きい部分は解体し、補修を行いました。

 現在の生活習慣とは合わないようだったので、お客様専用の玄関の脇にあったプライバシー性の強い事務所を奥に移動し、その場所は靴のままで奥まで上がってこられるように土間の玄関ホールにしました。テーブルも用意しましたので、こちらで懇談もできます。

 靴を脱ぐと24帖の大広間が続きます。

 以前からあったこの部屋は、打合せや応接間として使われていました。機能はそのまま引き継ぎましたが、付随していた床の間が異形だったために整理し、新たに飾り棚を繕いました。仏像を置きたいなぁーと思ったので、座る人の視線が集まり、なおかつ暖かい雰囲気になるように、卵型の輪をつくり、その仏像にあたかも後光がさしているようにするために特殊な金属板を背面に張りました。

 神秘的な空間になったと思います。

 その他に個室の和室をひとつ。

 ご先祖のお仏壇を置くことが決まっていたので、厳かな近寄りがたい雰囲気というよりも、人の集まりやすい空間にしたいと思ったので、天井を繭のなかにいるようなアーチ形として優しい雰囲気にしつつ、ヒノキの丸太を十字に組みケヤキの柱で受けるようにして、真新しい空間のイメージを避け、築100年の時間を表現できるようにしました。

 雪見障子を上げると、和風の庭園が広がります。


 改装工事は壊してみないと分からないことが多いため、イレギュラーなことが度々起こり、現場での対応が数多くありました。そのせいで、大工の岡部さんと竹内さんには苦労お掛けしました。また、お施主様の寛大な計らいにも頭が下がるばかりでした。

 お施主様は勿論のこと、工事に関わった皆様のおかげで出来上がった工事だと改めて感じます。建築の辛さと面白さを120%味わった本当に思い出深い現場になりました。

工事前の外観写真。込み合った建物でした。

工事前の外観写真②。お客様専用の玄関。

工事後の外観写真。②と比べるとモダンなイメージに。

工事後の内観写真。広々とした明るい玄関ホールに。

以前から使われていた家具を配置。

中から外を見る。

大広間の飾り棚。真鍮の板を化学変化させた特殊な金属板。

個室の和室。アーチ形の天井と化粧柱と丸太梁。

和室内部。落ち着いた雰囲気です。

庭を眺める。大切にしているものを利用しながら。

ひとつぼし

地域に根差したアーキテクトビルダーとして、住宅や店舗を中心に、設計から施工までを一貫して監理を行う建築会社です。 使用が限られてしまっている自然素材や失われつつある技術を大切に使っていきたいと思っています。 『夜空に輝く数ある星のひとつだけれど、いつもそこにある北極星のように確かな意志をもつ存在になろう』という意味をこめて 『ひとつぼし』と名乗って活動しています。